新橋『アロマエイト』斉藤あすかさん
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感動は人を動かす。

この高揚感は言葉にしたくなる。

だから、僕はいま本当に久しぶりにメンエスの体験記を記そうと思った。


よっぽどのことがなければもう書くことはないだろうと思っていたのだが、そのよっぽどのことが時折、本当に実に何気ないタイミングで訪れるのが人生の面白いところだ。

別にこうした体験記を記さなかったからといってあるセラピストとの出逢いが特別なものでないということはないし、もしタイミングやその出逢いのカタチがこうした形式にバッチリと適合するものであれば、他にも書いてあげたいと思うようなセラピストは何人もいる。

が、しかし、こちらのたまには体験記も書きたいという気持ちと、そのタイミングで書きたいと思えるような対象に出逢えることと、実際に書くことがその人にとっても自分にとってもプラスの意味を持つと思えるというこの3つが揃わないと、もはや職業ブロガーではない、一人のメンエスユーザーとしてはなかなか筆が進まない。況してや、現在の僕は一ユーザーというよりはメンエス講師であり、セラピストとしての活動が中心である。今更、メンエスに行って一体何に驚くというのであろう。


だが、こうした面倒臭い諸々のハードルをくぐり抜けて、妙にすんなりとたまには書いてみようかという気分にさせてくれたのが、今日お逢いした斉藤あすかさんである。ここまで書いただけで彼女がどれほど僕がメンエスに求めているもの、あるいは僕がメンエス体験記を書く上で求めている「何か」を満たした存在であることはわかって貰えるだろう。その「何か」を言わないと、この体験記にはきっと1ミリの価値も無くなってしまうだろうから、その点ははっきりさせておきたい。

結論から言うとそれは「ある種の軽やかさ」であり、「爽やかさ」だと言えるだろう。

そして、そうした軽やかで爽やかで、さながら春の訪れを予感させるような清新な印象は、彼女がこれまで生きてきた時間やこの短い期間(まだ3ヶ月だという)とはいえ経験してきたであろうメンエスでの施術や接客への向き合い方が至極「真っ当」であるからこそだろうと、その人生についてはほとんど何一つ知りもしないくせに断言したくなるような素晴らしさがあったのである。


そもそも美人好きでオイルマッサージ好きな僕としては綺麗で性格も悪くない人にそれなりのオイルマッサージしてもらえたらほとんどそれだけで満足できると思っている。鼠蹊部、密着、露出の多い衣装といった昨今のメンエスの売りがさほど強調されなくとも、魅力的な人にちゃんとしたマッサージをして貰えるならもうそれだけで十分満足である。

だが、このちゃんとしたマッサージ、ちゃんとした施術というのが決して担保されていないのがメンエスという業種である。だから、彼女を受けるにしたって気になるのは、本当に『可愛いのか』、本当に『良い子なのか』というその2点に尽きる。だが、旧知のセラピストさんに訊いても店舗のスタッフの誰に訊いてもこの2点についてはほぼ絶賛の声しかなく、おまけに「夢さんにもきっと合うと思う」という嬉しいようなちょっと責任を感じてしまうようなコメントまでつけてくれたのである。

という訳で、決して嫌われぬように、またあまり期待しないようにと心に誓いながら今日という日を迎えた次第だ。


待合室で待っていると、「はい、こちらでご案内です」と今日は見慣れぬスタッフに声を掛けられる。


そして、廊下に出ると次の瞬間『扉が開かれて、その向こう側には今日の主役が微笑んで佇んでいる』というのが店舗型メンエスにおける「対面」のお約束であるが、今日の場合はもっと驚いた。

廊下に出ると扉の向こう側ではなく既にもうこちら側に彼女がいたからである。

それは実に何気なく、「はい、待っていましたよ、さあ、行きましょうね」という具合の気安さであり、貴重な初対面の瞬間を少し緊張しながらも演出しようというような気迫は少しも感じなかった。実際、僕の目に映った彼女の最初の姿はこちらに正対したものではなく、道案内するように少し斜めに進行方向に身体を傾けたその驚くほど美しい横顔であった。驚いた僕は少し声を失って、多分すぐさま「いや、本当に可愛い、本当に綺麗なんですね」と安っぽいナンパ師のようにベラベラと称賛の言葉を並べていたと思う。今になってみると、あんなにも軽薄に称賛の言葉を吐くものではないと恥ずかしくなるが、どうにも抑えられずに繰り返してしまった。写真を載せているのだから何をそんなにと思われるかもしれないが、本物の美女を生でちゃんと見るとそれだけでびっくりするところがある。それに最近だと写真は随分と加工が強いから、写真で盛られた部分を差し引いて見ないと普通はガッカリするものである。だが、彼女のような本当の美女の場合はそうした写真は加工された分自然美より遠のき平均化して見え、もちろんいわゆる可愛い写真にはなるのだが、現実の個性的で奥行きのある美しさには及ばない。これぞ世に言う『逆パネルマジック』である。髪を結んでアップにした宣材写真はちょっと少女のような幼さを覗かせるアイドル的可愛さが強力であるが、

出迎えのときに見た彼女は施術前とあって髪も下ろした大人びたスタイルで可愛いアイドルというよりは正統派の新人女優のようであり、その艶やかで今にも咲き誇る時期を待っている桜の蕾のような美貌はこの季節にこそ相応しいと思わせるほどだ。


うん、なかなか狂気じみた高揚感のある文章になってきたので、ここからは少し落ち着いて彼女と過ごした時間を記してみようか。

こんな具合にひとしきり褒め言葉を重ねた訳だから、彼女としてはもしかしたら戸惑ったり、鬱陶しく思ったかもしれないが、特に謙遜して否定するわけでもなければ「よく言われます」とばかりに自信に満ちた「キラースマイル」を返すでもなく、一つ一つに「ありがとうございます」と実にフラットに落ち着いた感じで応答してくれた。こうなると全部本心からの言葉ではあるとはいえこんなありきたりの賛辞ばかりを良い歳こいたおっさんが繰り返していること自体恥ずかしく思えたのもあって、割とすぐに接客・施術のターンに落ち着いた。普通ならお互いの自己紹介的なトークをする筈だし、一ユーザーとしての僕はそうした話が好きなのだが、振り返ってみると驚くほどそういった話もしなかった。ならば仲良いセラピストとよく話すようなメンエスについてのよもや話を沢山するかといえばそんな話も全然しなかった。だから、彼女が何をキッカケにこの仕事を始めたのかとか、僕がどの程度メンエスに行くのかというようなお決まりの話は今のところ何も知らないのだが、それでもいま僕は十分に満足している。

結局、僕らの間には施術を通したコミュニケーションこそがあり、そうした距離感やマッサージそのものがとても心地良かったのだと思う。もしかしたら余計なことを一切知ることなく、施術や目の前の彼女に集中できたからこそこんなに楽しかったのかも知れない。かといって、講師やセラピストとしての血が騒いで、ひたすら講習的な内容に終始し、優秀な教え子を得たことによる喜びという感じでも全くない。こうした方が良いよ、こうするんだと少しは教えることもしたが、彼女はそのどれもすぐにできてしまうので、僕自身が受ける上でも「ここは違うな」などとはほとんど思うことなく、十分に楽しむことができた。

要するに彼女はマッサージのセンスとそれに伴って自然と身についた技術が抜群なのである。

それもただ習った施術を細切れに身に付けて、ひたすら講師に言われた順序を丸暗記しているというようなやり方ではなく、習った内容を自分の中で咀嚼してアウトプットできているのは間違いなく、僕が提唱している「自分のアタマで考える施術」を自然と実践できているところが素晴らしい。

だから、彼女のことはあまり知らないなりにもあすかさんがマッサージ好きであること、そしてきちんと自分のアタマで考えたり判断したり出来る人だということは言える。恐らく、家族に鍼灸師がいたり、18歳のときに交通事故に遭い、整骨院に通わざるを得なかったということのお陰もあろうが、マッサージにおいて何が良く、何が気持ち良いものなのかを方法そのものは知らなかったとしても、自分の身体で知っている人なのだと思う。そうでなければ、僕が少し教えたところでそれをすぐに実践できるものではないだろう。
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彼女の施術はまず互いに向かい合って座るところから始まった。

鏡に向かって座らせるのではなく、最もお互いが相手の全存在と向き合わざるを得ない姿勢から施術が始まる訳だ。

鏡越しにチラチラ視線を合わすとか、覗き見るのではなく、「ああ、この人はこういう人か」と相手との適切な距離感を測り、その後の時間には生かすためには大切な時間なのだという。もちろん、僕にとってもそれはそれは楽しい時間であった。

特に何か話らしい話をすることはなかったが、その可愛らしい顔と美しい肢体と向き合いながら普通に気持ち良いマッサージを受けられるのだからもうそれで十分ではないか。


横向きの心地良いトリートメントを受けながら、僕は思わずこう言った。


「今日はただあなたの顔を見て、可愛い、可愛いっていうつもりで来たんだけど、これだとマッサージも上手いって言わないといけないね」


「嬉しいです!」


それはそれまで僕が繰り返してきた「綺麗だ」「可愛い」というような賛辞(全部本音だが)への応答とはまるで違うものだった。

メンエスのセラピストにとって、否ほとんどの対面職種において、ルックスやスタイルがアドバンテージとなるのは百も承知ながら、あすかさんが本当に施術やマッサージの腕で評価されたいと思っていると伝わってくるような嬉しそうな反応であった。

それを証拠に僕が今日その場で注意すべきこととして教えた内容は以降決して破られることなく、その後の施術でも実践である。しかもそれまでやってきた施術とも上手く整合性の取れた形でだ。


だから、僕はまたもやこう漏らす。


「気持ち良い。本当に上手。センスあるよ。」


「嬉しいです!!」


今度はもっとはっきりと本当に嬉しそうに彼女は言った。

最初から特に距離を感じていた訳ではないが、終わる頃にはすっかり距離も縮まり、もうお互い自然と話せるような雰囲気になっていたと思う。そんな訳で、僕はこんなブログをやっていて、今や休止状態だけど為になる記事もある筈だから良かったら読んでみてというような話まで思わず口にしていた。そんな調子だから思わず「体験記とか書いて欲しい?」などとまで訊いてみたところ、「書いて欲しい」、「書いてくれたら嬉しい」と、彼女はしっかりとした口調で言ってくれた。

「じゃあ、書いてみる」と僕。かくしてこのような体験記となった訳であるが、こんな風についつい書きたくなってしまい、書くことを相手も喜んでくれる、そんな関係が生まれたことが僕には本当に大事なことなのだ。


見送りの時間。自動ドアが閉まる。
軽く会釈してのお別れ、あるいは手を振ってバイバイという感じかと思いきや、そのとき彼女は本当に深々と頭を腰の辺りまで下げて、僕を送り出してくれた。
いまも目に焼き付いたその本当に綺麗なお辞儀を思い浮かべながら、やはり本当に彼女は春風のように爽やかなセラピストだったと感じている。


メンエスはこういうものであった筈だし、これからもこういうものであって欲しい。
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